低圧屋内幹線の電線太さと過電流遮断器容量の問題は、過去6回で4回出題の合格必須項目。
合格のための重要ポイントは3つ。
- 電動機の定格電流と始動電流
- 幹線太さの設計方法
- 遮断器容量の設計方法
出題傾向と対策
電動機の定格電流と始動電流
低圧屋内幹線と分岐回路の例がこちらの図(R3年下期 午後問9)。
左の縦方向の線が幹線、その幹線に施設されているのが幹線の過電流遮断器。そして、幹線から右に分岐しているのが分岐回路である。
幹線には分岐回路につながっている負荷の電流が流れるから、それらの電流が同時に流れたときにも大丈夫なような太さに、そして過電流遮断器もその電流には反応しないようになっている必要がある。
じゃぁ、この配線図だと、3つの負荷の定格電流を足し合わせた 25A が安全に流せれば良いかというと、そうはいかない。
というのも、電動機(モータ)は、始動時には定格電流の数倍の電流(始動電流)が流れるからである。
電工2筆記から少々それるが有用なので覚えておいて欲しい。次の図は、電工1の筆記試験を受験するときには必ず覚えておきたい図で、電動機の電流・トルク特性を表している。
赤色の線が電動機に流れる電流を表しているが、定格電流というのは、横軸のすべり 5~10%くらい (赤線と青線の交わった点ちょい左の位置)の電流になる。
一方、始動電流は横軸一番左、停止=すべり 100% のときの電流値となる。
この図から始動電流は定格電流に比べて、けっこう大きい電流であることが理解してもらえると思う。
というわけで、分岐回路に電動機が含まれていると、幹線に流れる電流値は負荷の定格電流を単純に足し合わせただけではダメ、ということが分かるだろう。
幹線太さの設計
それでは、幹線太さをどのように決定すれば良いかを説明する。
手順をフローチャートにまとめてみると、こんな感じ。
言葉で説明するより、実際に求めてみると理解が早いと思うので、下の配線電路について、幹線の太さを決めてみよう。チャートと交互に見比べながら一緒に求めてみてほしい。
まず、分岐回路に接続されている電動機の定格電流の合計 IM と、電動機以外の負荷の定格電流の合計 IH を求める。
電動機は2台、5A と 15 A が接続されているから、IM = 20A。
一方、電動機以外の負荷は1台、5A だから、IH = 5A
これで合計電流 IM と IH が求まった。
次は IM と IH の比較。
IH ≦ IM だからチャートを右に進む。
すると、IM は 50A より小さいから、チャートを左に進む。
すると、幹線電線の許容電流は IW = IH + 1.25 IM だから、
IW = 5 + 1.25 × 20 = 30A
このようにして IW を求める。
需要率が指定されているとき
上の計算法では触れなかったが、問題文をよく見ると需要率という文字が書いてある。
この需要率とは、平均してどれくらい負荷を動かしているか、ということ。
例えば、上の配電図で、15A の電動機は 9~17時に稼働させるが、5A の電動機は夜間 20~翌朝 6時までしか動かさない、とする。
すると、IM を 20A と計算するのはもったいない。だって、1日のうち電動機の電流は MAX 15A しか流れないのだから。
こんなときは、需要率を使って、IM = (定格電流の和)×重要率 と計算する。需要率とはこんな風に使う。
上の問題では、需要率 = 100% なので、IM = 定格電流の和 で OK。
一方、R では需要率 = 80% なので、IM と IM を計算するときには、それぞれ需要率=80%=0.8 を掛ける。
遮断器容量の設計
幹線電路には過電流遮断器を設置するが、遮断器容量も負荷電流に合わせて、適切な容量にしなければならない。
遮断器の最低容量 IB を計算する手順を次の図で示す。
まず、電動機が接続されているか否か。問題の配電路では電動機が2台接続されているから、チャートの右に進む。
次に IH+3×IM と 2.5IW を計算する。
・IH+3×IM = 3×20 + 5 = 65A
・2.5×IW = 2.5×30 = 75A
そして 2つの電流値を比較すると、 3×IM + IH ≦ 2.5×IW。
だからチャートを左に進んで、遮断器容量の最大値 IB は2つの電流値の小さいほうになるから、IB = 65A
このようにして、過電流遮断器の最小容量 IB を計算する。
注意点として、IB≦65A ということは 0A でも数式的には正しいことになる。
し、か、し、遮断器の定格容量が 0A なんて、当然配電路として機能しない。この点、注意というか気を付けること。
過去問
R3年上期-午前問9
図のような電熱器 〇H 1台と電動機 〇M 2台が接続された単相2線式の低圧屋内幹線がある。この幹線の太さを決定する根拠となる電流 IW [A] と幹線に施設しなければならない過電流遮断器の定格電流を決定する根拠となる電流 IB [A] の組合せとして、適切なものは。ただし需要率は 100% とする
<解法>
需要率は 100%。
IH=10A。電動機は2台接続されているので IM=40A で、 50A 未満。
したがって、IW=IH+1.25IM=60A
次に、3IM+IH=130、2.5IW=150 だから、IB は小さい数値の130A 以上。
R2年下期-午後問9
定格電流 12A の電動機5台が接続された単相2線式の低圧屋内幹線がある。この幹線の太さを決定するための根拠となる電流の最小値 [A] は。
ただし、需要率は 80% とする
<解法>
需要率が 80% なので、電流の計算は 0.8 をかけて行う。
定格電流 12A の電動機が 5台 接続されているので、IM = (12×5) 0.8 = 48A。
50A 未満だから、IW = 1.25IM + IH = 1.25×48 + 0 = 60A。
以上から、根拠となる電流の最小値は 60A。
まとめ
合格するための重要ポイントは次の通り
関連問題
・R3年下期-午後問9
・R3年上期-午前問9
・R2年下期-午後問9
・R2年下期-午前問9
・配電線路の解説一覧